自動車業界におけるデジタルツインの一般的な利用事例
by Canonical on 5 October 2022
デジタルツインという言葉は、ここ数年の流行語と言っても良いでしょう。でも具体的には何のことでしょう?デジタルツインとはその名のとおり、物理的な物体の非物理的なコピーです。絵の実物をスキャンした画像ファイルと同じです。この仮想コピーがあれば、物体から送られるすべてのデータをリアルタイムで把握できます。研究対象のシステムによっては、特定のセンサーのデータを追跡し、監視することも可能です。これによって、システムの環境(道路の滑りやすさ、天候、周辺の物体やシステムなど)を再現できます。このブログ記事ではデジタルツインと自動車業界での利用事例について解説します。

自動車の場合、デジタルツインを使用する目的のほとんどは走行のシミュレーションです。衝突テスト、自動運転、その他のシナリオは、物理的な車よりシミュレーターのほうが簡単で安価に実行できます。
人工知能や機械学習(AI/ML)を使用すれば、実際のシステムで問題が表面化する前に、デジタルツインで問題を特定できます。つまり現実で問題が発生する前に物理的なシステムを修正できるということです。利用事例についてもう少し詳しく調べてみましょう。
新しい車両の開発
自動車業界のデジタルツインは、車両からロボットアームまでさまざまな分野のシステム設計段階で使用できます。車両に関して言えば、デジタルツインにより信頼性の高い車両の設計と開発が可能になります。

電気自動車(EV)について考えてみましょう。新しいプロトタイプの燃費をモデル化することは非常に重要です。バッテリー管理システム(BMS)からホイールやタイヤ圧の効率まで、車の挙動を明確に把握することでエンジニアは設計を完成できます。また、熱や磁気の影響を抑えながらケーブルの配置を改善すれば、車両の重量とコストを減らせます。確かに消費電力について考えるとき、最初に思い浮かべるのはバッテリーの充電状態です。しかし、車両の空力特性も消費電力に多大な影響を及ぼします(EVだけではどんな車両でも)。数値流体力学(CFD)シミュレーションを利用すれば、車両の空力特性を高度に最適化できます。OEMはこうして抵抗係数を最小限に抑えています。
工場やサプライチェーンのシミュレーション
デジタルツインは、製造フローの最適化にも役立ちます。OEMやサプライヤーは、サプライチェーン全体を、製造の制約まで含めて考慮し、運用を合理化する必要があります。工場の観点からは、ロボットアームの設計、サプライチェーンの開発、コンベヤーベルトが非常に重要です。また企業は、拡張されたデジタルツインモデルを使用してサプライチェーンをシミュレートし、AI/MLモデルを実行して各種のシナリオをテストできます。[181] 工場の機械を設計するときにセンサーの最良の位置を予想できれば、使用時に時間を節約できるだけでなく、部品や材料の最適化に関係する削減も行うことができます。さらに企業は、拡張されたデジタルツインモデルを使用してサプライチェーンをシミュレートし、AI/MLモデルを実行して各種のシナリオをテストできます。[182]
自動運転のシミュレーション
自動車業界では、シリアルライフ(製造承認から製造終了まで)の段階でもデジタルツインが使用されます。
デジタルツインがあれば、AI/ML処理によって自動運転(AD)アルゴリズムをリアルタイムでシミュレートできます。つまりエンジニアや開発者は、シミュレートした環境でAI/MLのアルゴリズムを検証することにより、アルゴリズムの安全性を確認できます。実世界を模倣したデジタル環境で何万キロもテストしてから、アルゴリズムを物理的なプロトタイプに搭載するのです。物理的なテストには時間がかかりますが、シミュレーションは高速で、あるいは並列して実行できるため、重力、重量、物理的な衝突の予測を計算に入れた現実に近い環境を維持しつつ、何千時間分もの走行データを生成できます。

デジタルツインを使えば、このような計算を監視し、特に詳細なシミュレーションを必要とするシナリオも特定できます。たとえば、一部のADのリアルタイムシナリオは再現が非常に難しいものですが、センサーやアルゴリズムの調整には非常に役立ちます。物理的なプロトタイプが不要になることはありませんが、実際の物理センサー(カメラ、LIDARなど)のデジタルモデルを保有することで、開発時には予測されなかったシナリオをオープンワールドで実行する必要がなくなります。これによって経費を大幅に削減できるだけでなく、他の車両や歩行者との間で事故が発生するリスクを限定できます。
予測型の保守
リアルタイムの車両センサーデータを使用するデジタルツインにより、予測型の保守が可能になります。多くの自動車メーカーは現在、このようなデジタルツインを使用してセンサー(たとえばエアバッグ展開用センサー)を監視し、車両や工場の機械の部品に摩耗や裂け目があるかどうかを判定します。これによって停止時間がなくなり、在庫やリソースを予測可能になるため、大きなコスト削減が可能です。工場や車両の欠陥による事故のリスクが最小化され、システムの重要な(安全性関連の)要素と重要でない要素の両方のステータスを常に知ることができます。
自動車業界の強力なツール
このようにデジタルツインは、車両のライフサイクルのさまざまな段階で自動車メーカーに大きな可能性を与えてくれます。

開発段階では車両の構想、配線、重量、動力学、全体の構造をそれぞれ物理的なプロトタイプでテストするのではなく、シミュレートして最適化することで、コストを削減できます。製造段階では、機器の場所、保守、および構築プロセスの各ステップで必要な動作を最適化します。シリアルライフ段階では、摩耗や欠陥を予測するだけでなく、物理的な車両で発生したシナリオを再現することも可能です。
この記事で挙げた例はほんの一部です。今後の記事では、企業が直面している現実の事例を掘り下げます。デジタルツインを支えるテクノロジーに興味がある方のために、仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、高度な自動運転のシミュレーションにおけるvGPUの活用についても説明します。ご期待ください。
Canonicalの自動車に関する取り組みについては、ウェブサイトでご覧ください。
Charmed OpenStackとNVIDIA vGPUソフトウェアの協調に絞ったウェビナーもご覧いただけます。
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